さすがに今、パリへの旅を企てるのは火中の栗を拾うことになりかねない。
ならば東京でゆったりとフランスに出会うのも一興である。12月13日まで東京都
美術館で開催されているマルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 はいかがだろう。
日本人には根強い人気のある印象派、しかもその代表格ともいえるモネである。
余談ながら日本では何故印象派の絵画が好まれるのだろうか。表面的には「見れば
わかる」的な明朗さゆえかも知れない。それは古典的なキリスト教絵画のように、背景
に秘められた聖書の中の事跡に対する知識がなければ理解が半減してしまう、といった
難渋さから解放されているからである。しかしそれだけなのだろうか。
今回の展覧会では「異形のモネ」が演出されている。それはモネ最晩年の
作品群が提示している、我々が良く知っているモネの風景世界とは異質の抽象性
がもたらしている。セーヌ河畔の小村ジヴェルニーはモネの終の棲家として有名で
あり、現在は多くの観光客が訪れる「モネの家」がある。1922年の作とされる
『バラの小道、ジヴェルニー』はその自宅の庭を題材にしたものだが、絵具の重ね塗り
によって形態はほぼ失われていると言っていい。なにも示されずにこの絵を見せられれば
モネの作品とはわからないのではないだろうか。
他に逆にモネらしい『睡蓮』『ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅』など。モネの、印象派絵画の
奥深さを感じさせてくれる展覧会だ。東京の後福岡市美術館に巡回する。こちらは
12月22日~来年2月21日までである。